ビャッコイの展示を見てきました。
先日の日曜日(クリスマス!)に,アクアマリンいなわしろカワセミ水族館にビャッコイの展示を見に行ってきました。
アクアマリンいなわしろ水族館は,いなわしろ淡水魚館が昨年4月にリニューアルした,まあ,小さな水族館のようなものです(詳細はリンク先にて)。
こんな感じの外見です。
正直,建物自体はいなわしろ淡水魚館時代といっしょです。
しかし,展示は魚類や両生爬虫類だけでなく,水草,冬虫夏草,水生昆虫,キノコ,外来種など,挑戦的でマニアックなものばかり。
本当に水族館なの?って感じですがまあ細かいことは置いておきます。
あと,カワセミの展示がないのも少し気になりますがこれも細かいことなので置いておきます。
※撮影の許可はいただいております。
ビャッコイはこんな感じで展示されてました。
写真中の直方体の水槽の右半分に入っています。ここからだとぜんぜんみえません。
ちなみに,この水槽の左半分はバイカモです。
H澤さんにも会うことができて,栽培状況とか巣箱からカワネズミが出てこない話などを聞くことができました。
どうでもいいですが,数年ぶりに直方体という単語を使った気がします。
小学校算数や中学校数学では首都圏のゴ◯ブリなみによく出てきた単語ですが,大人になってから使わなくなってしまいました。他にどんな用途があるでしょうか?
...「キハ110系は直方体の車両である」とか?(どうでもいい)
アップにすると,こんな感じの植物。
ビャッコイIsolepis crassiuscula Hook.f.は,カヤツリグサ科の多年生草本です。
国内では福島県白河市の2ヶ所にのみ見られる植物で,環境省レッドリストでは絶滅危惧IA類に指定されています。福島県の天然記念物や希少野生動植物保護条例などにも指定されている植物です。
パッと見は水面に出たリュウノヒゲモみたいなかんじ。まあ,見た目は地味という方も多いような。
海外に目を向けると,この種は日本だけでなく,オセアニアにも隔離分布しているそう。でも,結構塩基配列が違うらしいです(Ito et al. 2016, Yano et al. 2016)。
実は,長いこと福島県に住んでますが,生きたビャッコイを見たのはこれで実はまだ2度目。最初に見たのは2週間ほど前,このビャッコイの採集のお手伝いをした時でした。
...お手伝いと言っても,作業の側で写真をパシャパシャ撮っていただけですが。
自宅がある福島市から高速を使っても片道1時間もかかるし,中々機会がなかったんですよね。県内で水草を調べているモノとしては,あるまじきことです。
ちなみに自生地はこんな感じ。
暗いスギ林の中にある湧水に生育しています。水深は浅いです。
あまりいい写真ではないですね。
スギの間から陽が差し込むため,晴れの日はスギの影ができてしまい,撮影には不向き。
さっきも書いたようにあまり派手な水草,というわけではないのですが,珍しいと言われると美しく見えてくる,絶妙な見た目の水草です。
時期が時期のため,繁殖器官には出会えませんでした。うーむ。残念。
アクアマリンいなわしろカワセミ水族館では,栽培を目指しているそうです。湧水の水草なので難しそうですが,なんとか頑張って欲しいものです。過去には,栽培を報告している人もいるんだとか(大石 1962)。
とりあえず,枯れそうにないうちは展示してくれるのでしょうか?
ぜひみたい!という方は,早めに見に行ったほうがいいかもしれません!
引用文献
Ito Y, Viljoen J, Tanaka Nr, Yano O, Muasya AM. 2016. Phylogeny of Isolepis (Cyperaceae) revisited: Non-monophyletic nature of I. fluitans sense lato and resurrection of I. lenticularis. Plant Systematics and Evolution 302:231–238. doi:10.1007/s00606-015-1253-7
大石俊雄. 1962. ビャッコイの栽培. 福島生物 5: 22–24.
Yano O, Tanaka Nr, Ito Y (2016) Molecular evidence for a natural hybrid between Isolepis crassiuscula and Isolepis lenticularis (Cyperaceae) in New Zealand, New Zealand Journal of Botany, DOI: 10.1080/0028825X.2016.1205106