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植物学用語の豆知識を覚え書き① "bract" と "bracteole" ※この記事は間違いでした。

 事の発端は,現在印刷中の論文の査読の際,レビュアーに "bract" と "bracteole" の使い方を指摘されたことである。

 イチヤクソウ属は普通,花茎の中間あたりに0~数個,およびそれぞれの花の柄の基部に1つずつ,鱗片葉状の"苞"をつける(写真のオレンジ枠参照; 花茎に苞をつけない株が稀に見られる種も存在する)。どちらも形状がよく似ているので,当時の私の原稿の記載文では,どちらも "bract (苞)" として,まとめて形態を記載していたのである。この単語の使い方について,レビュアーから誤用であることを指摘された。曰く,「小花柄 (pedicel) の基部についているのであれば,それは "bract" ではなく, "bracteole" が正しいのではないか?」ということだった。

 調べてみると,"bract" と "bracteole" にはそれぞれ「苞」と「小苞」という日本語があてられていて,以下のような特徴をもつそうである。ちなみに,日本語訳は清水(2001)に従い,それぞれの単語の意味は http://www.floranordica.org/info/termlistfiler/eng-eng.html を参考にした(後で文献でも調べるつもりである)。なお,英語は直訳ではない。

"bract (苞)":単生する花,花序,あるいは分枝部につく変形した葉

"bracteole (小苞)":小花柄につく,二次的あるいは補足的な苞

 なるほど,つまり,花序(ざっくり言うと花の集合体)をつくる植物において,花序につく変形した葉を "bract (苞)" ,分岐したそれぞれの花の柄(小花柄あるいは小花梗という)につく変形した葉を "bracteole (小苞)" と使い分けるのである。花序をつくらず花が単生する植物の花柄につくものや,枝が分枝する際につくものは,すべて "bract (苞)" というらしい。イチヤクソウ属は複数の花を総状につける花序をもつので,花茎の中間につくものは "bract (苞)" ,それぞれの花(正しくは小花)の小花柄につくものは "bracteole (小苞)" というレビュアーの指摘はごもっともである。非常に勉強になるご指摘であった。

 形態の記載文を書く際,先行研究で使われている単語をそのまま用いてしまうことは往々にしてあることらしい(自分もそうだが,いまのボスも現在執筆中の論文では先行研究に従って単語を選んでいると言っていた)。正直,先行研究で使われた単語を一つ一つ丁寧に調べる時間や能力がいまの自分にあるとは言い難いので,非常にありがたい指摘だったと思う。そういう意味では,大当たりのレビュアーであった。

 喉元過ぎればの勢いでこのことをすっかり忘れていたのだが,本日,ボスが執筆中の論文についてしゃべっている時に思い出したので,覚え書きとしてここに記しておく。

 ただし,本日改めて調べてみたところ,先ほど引用した清水(2001)の図は,ドクダミの小花の基部についている器官を,小苞ではなく苞と示しており,謎である。単純な間違いなのだろうか… もし何かご存知の方がいれば,ぜひ教えていただきたい。

※その後,神戸大のSさんと情報交換をして,このブログ記事が間違っていることがわかりました。混乱させてしまい,大変申し訳ありませんでした。訂正として,新たな記事を書きました。気になる方はご確認ください。

引用文献

 清水建美. 2001. 図説 植物用語事典. 八坂書房, 東京.

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