植物学用語の豆知識を覚え書き① "bract" と "bracteole" ※訂正編
昨日の記事について,間違いが発覚した。
Facebook上で,昨日紹介した用語(bractとbracteole)の使い方が当てはまらない植物を教えていただき,議論しているうちに,こちらの間違いが発覚したという経緯である。
ということで皆様,昨日書いた記事の内容は嘘っぱちでした。大変申し訳ありません。この場で謝罪とともに,訂正させていただきます。
そもそもの原因は,bracteoleの説明にあった"on the pedicel of a flower"という言葉を間違えて理解していたことである。言葉としては,「小花柄につく,二次的あるいは補足的な苞」という訳であっているのであるが,これは「小花柄の基部につく」という意味ではなかったようである。いまになって冷静に考えたら,当たり前である。小花柄がつく正しい位置は,以下のページで解説されていた。
つまり,小花柄のつき方には3通りあって,①小花柄そのものにつく ②萼か花托につく ③花托と小花柄の間の節につく ということらしい。
正直,ピンとこない方もいらっしゃると思うので,小花柄のついた花の写真がないかHDDを漁ってみた。が,なかなか小さい器官であることが予想されるので,案の定ほとんどない。そんな中で,唯一見つけた写真が,これである。今度こそ正しい小苞である。刮目せよ!
ミョウコウトリカブト Aconitum nipponicum Nakai subsp. nipponicum var. septemcarpum (Nakai) Kadota
予想はしていたが,ち,小さい…
ということで,正しい"bract(苞)"と"bracteole(小苞)"の理解は,以下の通りである。
"bract (苞)":1つの花,花序,あるいは分枝部を抱くようにつく(基部につく)変形した葉 "bracteole (小苞)":小花柄,萼あるいは花托,または小花柄と花托の間の節につく,二次的あるいは補足的な苞
"bracteole"の誤解に引っ張られて,さりげなく,bractの方も間違えた理解をしておりました。
昨日書いた「花序だと小苞,単生花だと苞」というのは完全な間違いなので,注意してください。
さて,それだと,イチヤクソウの場合はどうなのであろうか。
改めて写真を見てみると,僕が投稿論文で"bracteole (小苞)"として記載した器官は,紛れもなく花柄の基部についている。なので,この器官の正しい名称は,"bract (苞)"である。そうすると,花序の下部にある器官は何なのだろうか? 完全な答えは出ていないのだが,手元にある改訂新版日本の野生植物を見ると,「鱗片葉」となっていた。なるほどなあ。
いま所属している研究室には旧イチヤクソウ科が収録されているFlora of Japan IIIaがないようなので,今度また確認してみようと思う。
また,今回の発端となった論文の話であるが,レビュアーの指摘に従って修正してしまったものの,実際には我々の修正は間違っていたようである。が~ん… 校正の時に,修正できないか交渉してみよう。。。
しかし,こうしてみると花序の下部に苞とよく似た鱗片葉?があるために,それぞれの花柄の基部についているものが,二次的な苞に見えなくもない。紛らわしい形態をもった花茎である。
将来,過去を省みて恥じるために,昨日の記事は残しておこうと思う。
ただし,混乱は招くのは避けたいので,おさらいで載せた写真と文章は消しておこうと思います。代わりに,以下に修正した写真を掲載しておきます。種名は,トキソウ Pogonia japonica Rchb.f.,カキラン Epipactis thunbergii A.Gray,エゾエンゴサク Corydalis fumariifolia Maxim. subsp. azurea Lidén et Zetterlund,ヒメミクリ Sparganium subglobosum Morong,ミヤマザクラ Cerasus maximowiczii (Rupr.) Kom.の順となっています。
今回は混乱をもたらしてしまい,大変申し訳ありません。今後共,当ブログをよろしくお願いいたします。
謝辞
神戸大学の末次健司特命講師には,間違いを自覚するきっかけとなる様々な情報をいただきました。深く感謝申し上げます。